血中循環腫瘍細胞を患者血液からラベルフリーで濃縮回収
ClearCell FX システム
リキッドバイオプシーと血中循環腫瘍細胞
リキッドバイオプシー(Liquid Biopsy)
非侵襲的にがん患者を診断&モニタリング
リキッドバイオプシー(液体生検)ではがん患者の血液からバイオマーカーを測定し診断を行います。従来のバイオプシー(組織生検)では、①組織サンプルの採取が困難なcancer typeあるいは患者がいる、②定期的なモニタリングが困難、③患者の負担が大きく出血などのリスクもあるなどの問題がございました。リキッドバイオプシーは、末梢血サンプルを用いるため、このような課題を解決可能です。また、針生検では、採取する組織の位置により細胞集団のステータスが異なるという腫瘍不均一性(heterogeneity)の問題がございましたが、リキッドバイオプシーはこの問題を解決できる可能性もございます。
そのため近年では、リキッドバイオプシーによりがん患者の診断、治療選択、治療後の残存腫瘍や再発のモニタリングを行う試みが頻繁に行われ、既に臨床実装が進んでおります。
血中循環腫瘍細胞(Circulating Tumor Cells; CTCs)
がん細胞そのものを解析する強力なリキッドバイオプシー・モダリティー
リキッドバイオプシーでの測定対象には、血漿フリーDNA(Cell-free DNA)、miRNA、エクソソームなど様々なものがございます。血中循環腫瘍細胞(CTCs)はそのひとつです。CTCsはその他のリキッドバイオプシー・モダリティと異なり、①転移再発を起こす元となる癌細胞そのものである、②細胞なのでmRNA解析や染色体異常の解析が行いやすい、③細胞培養やPDXモデルマウスの作製にもチャレンジ可能、という利点がございます。
ClearCell FXの特徴と利点
ラベルフリーCTCs濃縮回収
血中循環腫瘍細胞(Circulating Tumor Cells; CTCs)の回収メソッドには様々な方法が提案されています。その中で、ラベルフリーでCTCsを濃縮回収できるClearCell FXシステムは下記の利点を持ちます。
- EpCAMなどの細胞表面抗原の発現に依存せずにCTCsを濃縮回収
- 極めて簡単な操作性と自動化されたワークフロー
- 同一検体からのCTCs解析とctDNA解析を可能にするワークフローを利用可能
- インタクトなCTCsを回収
- 回収したCTCs を様々なダウンストリーム解析に利用可能
ワークフロー
ClearCell FXのワークフローはシンプルです。採血した検体を簡単な操作で前処理するだけで、誰でも簡単に実験を進めていただけます。血中循環腫瘍細胞(CTCs)はPBSへの懸濁液として濃縮回収されます。そのままダウンストリームのご実験に進んでいただくことも、CD45によるネガティブセレクションでさらに白血球を除去してからダウンストリーム解析に進んでいただくことも可能です。
- Sample Collection:EDTA採血管あるいはStreckチューブに7.5 mLの血液を採血します。
- RBC Lysis:赤血球成分を溶血後に遠心し、ペレットをバッファーに懸濁します。
- CTC Enrichment:ClearCell FXシステムでCTCsを濃縮回収します。所要時間は約53分です。
- Enriched CTC Sample:PBSへの懸濁液として濃縮されたCTCsが得られます。ダウンストリーム解析あるいは白血球のさらなる除去を行います。
回収原理
ClearCell FX では、CTCs の回収にマイクロ流路チップ(ディスポーサブル)を使用します。 チップにはスパイラル状のマイクロ流路が刻まれています。 前処理した血液検体をこのマイクロ流路チップに流すと、CTCs がサイズの違いにより流体力学的に血球成分と分離されます。 分離されたCTCs は、遠心チューブに懸濁状態で回収されます。
アプリケーション
ClearCell FXで回収した血中循環腫瘍細胞(CTCs)は、免疫染色・FISH・遺伝子発現解析・遺伝子変異解析・シングルセル解析・細胞培養・PDX樹立など様々なダウンストリーム実験に進んでいただけます。
|
蛍光免疫染色 |
CTCsの数は転移再発の予後マーカーになると言われています。濃縮回収した血中循環腫瘍細胞(CTCs)を蛍光免疫染色してCTCsの数をカウントします。 また、特定のタンパク質に対しての抗体で免疫染色することで、特定の分子病理学的な性質を持つCTCsの数をカウントすることもできます。 |
|
病理染色 |
濃縮回収したCTCsをHEやPAPで染色し細胞病理学的な解析を行います。 病理学的な解析はタンパク質発現のヘテロジェネイティに依存しない細胞カウントを可能にします |
|
FISH |
蛍光 in situ ハイブリダイゼーション(FISH)により、 ClearCell FXで濃縮回収したCTCsの染色体異常を解析することができます。 融合遺伝子、遺伝子増幅、遺伝子欠失をドライバー変異とする癌の治療奏効性のモニタリングなどを可能にします。 |
|
細胞培養 |
ClearCell FXは細胞のViabilityを維持したままCTCsの回収が可能です。したがって、CTCsの培養あるいはPDXの作製を可能にします。 CTCsによるin vitro 腫瘍モデル、あるいはin vivo腫瘍モデルは創薬やCTCsの生物学的特徴の解明に新たな可能性をもたらします。 |
|
ゲノミクス トランスクリプトミクス |
ClearCell FXで濃縮回収したCTCsはNGSあるいはデジタルPCRを用いて遺伝子変異を解析することができます。 また近年進歩が目覚ましいシングルセル解析技術と組み合わせることでCTCsの遺伝子発現解析をシングルセルレベルで実施することでCTCsのキャラクタライゼーションなども可能です。 |
論文例
Identification and Single-Cell Analysis of Viable Circulating Tumor Cells by a Mitochondrion-Specific AIE Bioprobe |
Concordance of anaplastic lymphoma kinase (ALK) gene rearrangements between circulating tumor cells and tumor in non-small cell lung cancer |
Xenograft tumors derived from malignant pleural effusion of the patients with non-small-cell lung cancer as models to explore drug resistance |
Succinct workflows for circulating tumor cells after enrichment: From systematic counting to mutational profiling |
Detection of CTCs in portal vein was associated with intrahepatic metastases and prognosis in patients with advanced pancreatic cancer |
The prognostic significance of circulating tumor cells in head and neck and non‐small‐cell lung cancer |
Live single cell mass spectrometry reveals cancer-specific metabolic profiles of circulating tumor cells |
製品仕様
製品番号 | CBB-F011003 |
品名 | ClearCell FX システム |
回収原理 | ラベルフリー(細胞サイズと細胞変形能) |
チップ | スパイラル状微小流路チップ(ディスポーサブル) |
処理できる血液量 | 最大 7.5 mL |
サンプルラン時間 | 約53分/サンプル(Protocol 1) |
前処理時間 | 20 - 30 分/サンプル |
採血後の保存可能時間 | 8時間(EDTA採血管)、72時間(Streckチューブ) |
細胞回収 | 懸濁液(PBS) |
装置サイズ(WDH) | 51 x 40 x 51 cm |
装置重量 | 35 kg |
必要電源 | 100-240 V / 50-60 Hz / 96 W |
使用環境 | 周辺温度 18-32 ℃、周辺湿度 20-60 % |
製品/シリーズに関するお問い合わせ
製品に関するご質問や技術的なお問い合わせなどはこちらのフォームをご利用ください。