Odyssey シリーズ
Odyssey DLx イメージングシステム
蛍光ウェスタンブロットやIn-Cell Western アッセイによる
タンパク質発現解析などに
近赤外蛍光イメージングスキャナー Odyssey DLx
LI-COR社のOdyssey DLx イメージングシステムは、蛍光ウェスタンブロットとIn-Cell Western アッセイを中心に各種のアプリケーションに対応する、近赤外蛍光専用のイメージングスキャナーです。世界中のラボで多くのファンを持つOdyssey ClassicあるいはOdyssey CLxの後継機で、Odysseyシリーズの中のベストセラー製品です。
蛍光ウェスタンブロット法は、定量的ウェスタンブロットに適した実験手法で、ケミルミ法と比べて再現性や直線性に優れた信頼性の高いデータを得ることができます。
In-Cell Western アッセイ法は、培養細胞からのタンパク質発現解析を、タンパク質抽出等のステップを経ることなく、セルベースでしかもハイスループットに行うことができます。創薬研究、ワクチン開発、マイクロバイオーム研究などの分野でよく使われている実験手法です。
Odyssey DLxは、上記の2つのアッセイに加えて、ゲルシフトアッセイ(EMSA)、プロテインアレイ、臓器イメージングなどの用途にも使用できます。
Odyssey DLxの主なアプリケーション
近赤外蛍光イメージング
Get Better Sensitivity with Low Image Background
Odyssey DLxでは、700nmあるいは800nmの近赤外蛍光波長を用いて、イメージングを行います。近赤外蛍光波長でのイメージングは、可視蛍光波長すなわちRGB(Red/Green/Blue)でのイメージングに比べて自家蛍光が低く、シグナルノイズ比の高い画像を得られるという利点がございます。
ブロットのイメージング
ウェスタンブロッティング等で用いるメンブレンは、PVDFメンブレンとニトロセルロースメンブレンを問わず可視領域の蛍光波長(400~650 nm)で強い自家蛍光を持ちます。
そのため、可視蛍光波長では目的とするタンパク質を十分な感度で撮影するのが困難です。
一方で、Odyssey DLxで用いる近赤外波長領域は、メンブレンの自家蛍光に由来するバックグラウンドが低いことが知られています。
そのため可視蛍光と比べてはるかに高感度に目的タンパク質を検出することが可能です。
※ ハウスキーピングタンパク質等の発現量が非常に大きいタンパク質は可視蛍光でも検出可能です。
細胞あるいは組織サンプルのイメージング
可視波長領域で強い自家蛍光がみられるのは、細胞、組織、臓器のイメージングでも同様です。
近赤外蛍光領域でイメージングを行うOdyssey DLx システムは、In-Cell Western アッセイや臓器のex vivo イメージングなどのアプリケーションでも、シグナルノイズ比の高い高感度なイメージを得られる利点がございます。
レーザースキャナーの利点
Odyssey DLx イメージングシステムは、励起光源としてレーザーを使用するスキャナータイプのイメージャーです。
レーザー光源は、LED光源と比べて励起波長幅が狭く、ピンポイントの波長で励起が可能です。励起光の検出チャンネルへの漏れ込みが少ないため、バックグラウンドの低い、より高感度な撮影が可能です。
さらに、波長特異性が高いことから、マルチカラーイメージングの際に2つの蛍光色素間における波長干渉(クロストーク)がほとんどなく、より正確な実験を行っていただくことができます。
また、スキャナー方式による撮影は、『イメージングエリア全域で均一な撮影が可能』、『サンプルと検出器の距離が近く光拡散が少ないため、よりクリアな画像が得られる』というメリットもございます。
蛍光ウェスタンブロット
Get Clearer Answers with Accurate, Replicable Western Blots
なぜ蛍光ウェスタンブロット?
蛍光ウェスタンブロット法は、以前から定量ウェスタンブロットに適した検出方法として知られていました( 参照)。この蛍光ウェスタンブロット法が近年再び脚光を浴びています。
蛍光ウェスタンブロット法は、化学発光ウェスタンブロット法よりも定量性と再現性に優れ、信頼性の高い定量ウェスタンブロットデータを得ることができる実験手法です。
そのため、創薬研究やシグナル伝達研究をはじめ、実験データに正確性と確実性が求められる分野を中心に、世界中の多くの研究者に好んで使われてきました。
さらに近年では、トップジャーナルを中心に定量ウェスタンブロットデータの論文投稿ガイドラインがアップデートされ、従来よりも厳正な実験を行うことが求められています。蛍光ウェスタンブロット法は、その最新の論文投稿規定を満たしやすい実験手法として注目を浴びています。
LI-COR社は、Odyssey イメージングシステムの開発により、約20年前に世界で初めて蛍光ウェスタンブロット法を実現したパイオニアです。その後も世界の一線の研究者やトップジャーナルとのコラボレーションを通じて定量的ウェスタンブロットの世界をリードし続けています。 |
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蛍光ウェスタンブロット法の利点 ❶ :安定したシグナル検出
化学発光法(ケミルミ法)はシグナルの検出に酵素反応を利用します。そのため、試薬との反応時間や温度など様々な要因によりシグナル強度が変動し、サンプル間での発現比を正確に反映するデータを再現性良く取得するのが困難です。
蛍光法は、シグナルの検出に蛍光標識二次抗体を使用し酵素反応に依存しないため、サンプル間での発現比を正確に反映する常に安定したバンドシグナルを得ることが可能です。
また、化学発光法で問題となる、基質の枯渇に伴う高発現タンパク質のサチュレーション(白抜け)も、蛍光法なら回避することができます。
> 6桁のダイナミックレンジによる信頼性の高い画像データ取得
Odyssey DLxシステムは>6桁の広いダイナミックレンジを持ちます。
そのため、弱いバンドと強いバンドを1回のスキャンで常に同時に撮影することができます。
実験毎に適正な露光設定(露光時間やゲイン設定)を探す必要がなく、Increment 撮影(逐次露光)やAuto-Exposure(自動露光調整)も不要です。
すなわち、Odyssey イメージングシステムを用いると、撮影毎に露光設定を変えずに常に一定の条件で撮影が可能です。蛍光ウェスタンブロット法の利点の1つである再現性の高さを活かして、さらに信頼度の高いデータを取得することができます。
サチュレーションを回避して定量直線性の高いデータを取得
>6桁のダイナミックレンジを持つOdyssey イメージングシステムは、撮影装置のダイナミックレンジの限界に起因するバンドのサチュレーション(Detector Saturation)も起こりません。
そのため、『定量直線性に優れる』という蛍光ウェスタンブロット法のもう1つの利点も最大限に生かすことが可能です。
Odysseyシリーズは、広いダイナミックレンジ(>6桁)をもつため、蛍光ウェスタンブロット法の利点をさらに活かすことができます。 |
蛍光ウェスタンブロット法の利点 ❷:同じブロットから複数のタンパク質を同時に検出
蛍光ウェスタンブロット法の2つめの利点はマルチプレックス検出です。
蛍光ウェスタンブロット法では、一次抗体の動物種を変えることで、複数の異なるタンパク質を1枚のメンブレンから同時に検出することができます。
検出対象の2つのタンパク質の分子量が近い場合でも、ストリッピングとリプロービングを行うことなく、同時に検出することができます。
定量性という点では懐疑的であったストリッピング実験を行う必要がありません。
リン酸化ウェスタンブロット
マルチプレックス検出は、リン酸化ウェスタンブロット解析などの翻訳後修飾の解析で特に威力を発揮します。
リン酸化ターゲットとトータル・ターゲット(リン酸化+非リン酸化)を、ストリッピング&リプロービングなしで同じブロットから同時に検出することができるため、薬剤刺激等による目的タンパク質のリン酸化レベルの変化を正確に定量することが可能です。
励起光源に波長選択性の高いレーザーを使用するOdyssey イメージングシステムは、マルチプレックス検出で問題となる波長間のクロストーク(波長干渉)がほとんど生じません。 |
蛍光ウェスタンブロットの利点 ❸:総タンパク質ノーマライゼーション
ハウスキーピングタンパク質(Actin, Tublin, GAPDHなど)は万能でしょうか?
近年、サンプル間や処理間でハウスキーピングタンパク質の発現が生理学的に変動する例が多く報告され、ハウスキーピングタンパク質に変わるロバストなインターナルコントロールとしてメンブレン上の総タンパク質染色を用いたノーマライゼーションが推奨されています。
蛍光ウェスタンブロット法は、この総タンパク質染色によるノーマライゼーションに適した実験手法です。
REVERT 総タンパク質染色試薬によるノーマライゼーション
近年、総タンパク質ノーマライゼーションのための様々な蛍光染色試薬が開発されています。
LI-COR社の REVERT 総タンパク質染色試薬は下記の特徴を持つ優れた試薬です。
-
- 特定のアミノ酸に依存しない染色法のため、すべてのタンパク質を均一に染色可能
- メンブレン上で染色を行い特別なゲルを必要としない
- 容易に脱色が可能
- 広い定量直線範囲
LI-COR社の REVERT 総タンパク質染色試薬は、抗原への抗体の結合を妨げない総タンパク質染色が可能です。特定のアミノ酸への共有結合に依存せず、脱色も可能です。 |
蛍光法による定量ウェスタンブロッティングについてさらに詳しく知りたい方はこちら
In-Cell Western アッセイ
High-throughput Cell-based Protein Expression Analysis
In-Cell Western アッセイは、Odyssey シリーズの中で、蛍光ウェスタンブロットと並んで人気のアプリケーションです。
培養細胞サンプル間のタンパク質発現解析を、96あるいは384ウェルプレートを用いてハイスループットに、しかもセルベースで行うことが可能です。
創薬における標的同定や薬効薬理研究、シグナル伝達研究、ワクチン開発/ウイルス感染症研究、医薬品候補分子の標的結合特異性試験などに特におススメの実験手法です。
In-Cell Western アッセイのカタログをダウンロードする
In-Cell Western アッセイの特徴と利点
In-Cell Western アッセイでは、細胞を播種した96あるいは384ウェルプレートの各ウェルで蛍光免疫染色を行い、各ウェルの総蛍光強度を数値化してウェル間で比較定量を行います。
ウェスタンブロットと同様に、総細胞数、ハウスキーピングタンパク質、全タンパク質(リン酸化+非リン酸化ターゲットタンパク質)などで、シグナル強度のノーマライゼーションを行います。
In-Cell Western アッセイは下記の利点をもつアッセイ方法です。
- 96ウェルあるいは384ウェルプレートを用いたハイスループットなタンパク質発現比較解析が可能
- セルベースでアッセイが可能(細胞洗浄、タンパク質抽出、電気泳動、転写などが不要)
- サンプル間のバラツキの少ないデータを取得可能
- シグナリングタンパク質のリン酸化など微妙な発現差をみたい解析に最適
In-Cell Western アッセイの応用例
- シグナル伝達タンパク質のリン酸化解析(医薬品のIC50解析を含む)
- アポトーシス関連タンパク質の発現解析
- RNAiや遺伝子編集による遺伝子発現調節の評価
- 細胞表面タンパク質および受容体のインターナリゼーション試験
- 遺伝子治療ベクターの宿主細胞導入効率の測定
- ウイルスやワクチンの力価試験
- 医薬品候補品の標的分子結合特異性試験
In-Cell Western アッセイについてさらに詳しく知りたい方はこちら
メンブレンやマルチウェルプレートだけでなく、
ゲルや顕微鏡スライド、あるいは臓器のex vivoイメージングまで
Wide Versatility in Sample Format
Odyssey DLx イメージングシステムは、ウェスタンブロットメンブレンからタンパク質ゲル、マルチウェルプレート、組織切片スライド、あるいは実験動物の臓器のイメージングまで、1台で幅広い種類のサンプルのイメージング実験が可能です。
- メンブレン: 同時に最大6枚スキャン可能(ミニブロットサイズの場合)
- ゲル:同時に最大9枚スキャン可能(ミニゲルサイズの場合)
- プレート:同時に最大6枚スキャン可能
- スライド:同時に最大30枚スキャン可能
正確な定量解析を可能にする次世代画像解析ソフトウェア
Expert Analysis Made Simple
Odyssey DLx イメージングシステムには、信頼性の高い数値化解析を誰でも簡単に短時間で実現することができる次世代の画像解析ソフトウェア Empiria Studioが標準で付属いたします。
これまでの「バンド強度を数値化するだけのソフトウェア」とは一線を画す新しいタイプの画像解析ソフトウェアです。
画像解析に不慣れな方から精通した方まで、エキスパートレベルの画像解析をシンプルな操作で簡単に行うことが可能です。
定量ウェスタンブロット解析
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- リニアレンジの解析、ハウスキーピングタンパク質の検証など定量性の確保に重要なバリデーション解析機能を搭載
- バックグラウンド補正など主観に頼りがちだった解析ステップを先進のアルゴリズムで自動化、再現性の高い定量解析が可能
- 総タンパク質補正におけるレーン強度を正確に解析
In-Cell Western 解析
-
- アッセイ構築ガイドと合わせて使用することで、In-Cell Westernアッセイが初めての方でもアッセイ最適化を効率的に実行可能
- 解析者間差や実験間差の少ない再現性の高い定量結果を取得可能
- 実験結果のグラフ化までソフトウェアが実行
実験結果を短時間で取得
Empiria Studio ソフトウェアは、皆様が実験結果を手にするまでの時間を短縮します。
これまでの画像解析ソフトウェアでは、各バンドや各ウェルのシグナル強度を数値化した後に、ノーマライゼーション補正、平均値やバラつきの計算、実験群間の発現比の計算やグラフ化などを1つ1つ別のソフトウェア(Excelなど)で行っていました。
Empiria Studioはこれらのプロセスをすべて、一連の流れで短時間で行うことができます。そのため、最終結果を得るまでにかかっていた時間を大幅に短縮し、研究活動を効率化することができます。
さらに、その実験結果は研究者間や上司・先輩と1つのファイルで容易に共有することができるため、ディスカッションや実験報告のためにわざわざ資料を作る手間も大幅に削減できます。
充実した試薬類と実験サポート
High-Quality Reagents & Technical Support
充実したアッセイ試薬
近赤外蛍光による定量ウェスタンブロット、In-Cell Western アッセイなど様々な実験のための充実した試薬類を取り揃えています。
近赤外蛍光ウェスタンブロットに関しては、 近赤外蛍光標識二次抗体(IRDye標識二次抗体)、 ブロッキングバッファー、 抗体希釈液、 総タンパク質染色ノーマライゼーション試薬、 分子量マーカー、 蛍光ウェスタン用ストリッピングバッファーなど、ほとんどの実験ステップの試薬をラインナップしています。
In-Cell Western アッセイに関しては、 近赤外蛍光標識二次抗体(IRDye標識二次抗体)、 ブロッキングバッファー、 抗体希釈液、総細胞染色ノーマライゼーション試薬( CellTag 700と CellTag 520)、In-Cell Western アッセイキット( ICW Kit Ⅰ、 ICW Kit Ⅱ、 ICW Kit Ⅲ、 ICW Kit Ⅳ)、 推奨96ウェルプレートなど、様々な試薬および消耗品をご用意しています。
その他の試薬および消耗品はこちち(LI-COR試薬消耗品ページ)
実験プロトコル
蛍光ウェスタンブロットやIn-Cell Western アッセイは経験がないから不安?
ご安心ください。充実のプロトコルをご用意しており、弊社が皆様のご実験をお手伝いいたします。
実験プロトコルについては ユーザーサポートページをご参照ください。
ウェブによるオンデマンド・トレーニングも受講いただけます。各実験ステップにおける実験のコツも含めて解説しています(言語は英語)。
テクニカル講習会開催のご要望も承っております。弊社までお問い合わせください。
製品仕様
仕様表
方式 | ポイントスキャナー |
イメージングエリア | 25 x 25 cm |
励起光源 |
685 nm 半導体レーザー(平均寿命40,000時間) 785 nm 半導体レーザー(平均寿命40,000時間) |
検出チャンネル |
700: Ex 685 nm / Em 710-730 nm 800: Ex 785 nm / Em 812-832 nm |
検出器 | Silicon avalanche photodiodes |
解像度 | 21, 42, 84, 169, 337 µm |
ダイナミックレンジ | > 6桁 |
フォーカス | 0 ~ 4 mm |
標準付属コンピューター | Windows 10 デスクトップ コンピューター&モニター |
標準付属ソフトウェア |
LI-COR Acquisition Software: 1 ライセンス Empiria Studio Software: 10 ライセンス |
本体サイズ | 幅53 × 奥行62 × 高さ37 cm(リッドオープン時の高さは74 cm) |
本体重量 | 33 kg |
動作環境 | 15-35 ℃(結露点22℃以下)、汚染度2 以下 |
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